6連勝!
開幕直後の不調が嘘のような快進撃で2位浮上!
選手個々の特長を見事に落とし込んだチーム戦術。
試合の中で選手達が成功体験を重ねることで、選手間での意識がすり合わされていき、
それが今やっと、勝利というカタチで実を結びはじめました。
J1第12節 ジュビロ磐田 vs 柏レイソル
5月20日(土)
14:00キックオフ
ヤマハスタジアム
磐田 0 - 2 柏
0 前半 1(柏 44分 クリス)
0 後半 1(柏 74分 中川)
<スターティングメンバー>
GK 中村 航輔
DF 小池 龍太
DF 鎌田 次郎
DF 中谷 進之介
DF 輪湖 直樹
MF 大谷 秀和
MF 手塚 康平
MF 中川 寛斗
FW 武富 孝介
FW クリスティアーノ
FW 伊東 純也
好調レイソルの課題①
試合の入り方
チームは好調6連勝!
とはいうものの……、
まだまだレイソルが本当に強くなったとは感じられないのが正直な感想です。
……でもそれはなぜなのでしょうか。
試合後のスタッツをみてみても、
ポゼッション率は、レイソルが相手チームを上回ることが出来ています。
チームのパス数を見ても、ディフェンスラインや大谷・手塚を中心に、しっかり主導権を握ることが出来ているのが分かります。
走行距離も、走れば良いというものでもありませんが、しっかりと数字は出ています。
スプリントの数も、クリスや中川、伊東の数字は飛びぬけていて、攻守に相手を苦しめているのが分かります。
だいいちそんなデータよりも、単純に、
ここ数試合のレイソルは、相手を好きにさせない攻守に連動した素晴らしいサッカーをみせてくれています。
勝ちきっている。試合内容も良い。
ではなぜ、本当に強くなった、とは感じないのでしょうか。
試合を観ていて、いつも感じるレイソルの課題のひとつにこんなものがあります。
それは、
『試合の入り方が良くない』
ということです。
ここ最近、試合の主導権をしっかり握って勝ちきる印象がある柏レイソル。
しかし、試合がはじまってすぐの時間帯、まだ試合のテンポを探っている状態の時に、相手が勢いを持って積極的に攻めてくると、どうしても受けに回ってしまう傾向がレイソルにはあります。
そして、そのままあれよあれよという間に相手にビッグチャンス。
そうです。
レイソルは毎試合、特に試合序盤、対戦相手に、驚くほど簡単に大きな決定機を作られています。
これが、レイソルが本当に強くなった、とは言い切れない要因のひとつでしょう。
流れを引き寄せる
GK中村航輔
毎試合おとずれる試合序盤の大ピンチ。
しかし今のレイソルにはそれと同時に、試合序盤に必ず目にするプレイがあります。
GK中村航輔のビッグセーブ!
試合の入り方が悪いレイソルが、失点を免れ、破竹の6連勝を達成した最大の要因。
それはGK中村航輔という存在が、試合序盤の絶対的なピンチを、最後の最後で跳ね返してきたところにあります。
それも、どれも簡単なセーブなどではなく、航輔だからこそ止めることが出来た!というような絶妙な飛び出しやビッグセーブばかり!
まさに守護神というような働きで、Jリーグでも数少ない勝ち点3を持っている選手と言えるでしょう。
今節の磐田戦でも、試合がはじまってすぐ、
スピードに乗ったアダイウトンとの1対1、あわやという場面を絶妙なポジショニングで跳ね返すと、
ペナルティエリアそば、名手・中村俊輔の絶好のFKを横っ飛びでスーパーセーブ!
失点を覚悟するような2つの場面を脅威の反応で抑える見事な活躍!
このプレイが、レイソルに勢いをもたらします。
ボールを支配し、右サイドを起点に相手守備網を切り裂く場面が増えてくると、
前半終了間近、44分。
素晴らしい連動から伊東がグラウンダーのクロス。ニアで中川が潰れて、軌道の変わったボールをクリスが体をねじりながら右足一閃!
素晴らしい時間帯にレイソル先制!
伊東がクロスを上げきったこと。中川がしっかり詰めていたこと。クリスが自慢の身体能力で無理やり枠に持っていったこと。
このどれもが気迫を感じる素晴らしいプレイでしたが、
これも全て、中村航輔が序盤に踏ん張ってくれたからこそ得られた先制点です。
今後、気温の高い夏場の試合、90分の運動量を考えても、試合の入り方が難しい試合が続くと思います。
そんな中、航輔の活躍が無くとも先制点を取れるように、試合序盤の守備をもっと突き詰めていきたいですね。
PK判定くつがえるも影響なし!
大谷秀和のキャプテンシー
後半、レイソルがゲームを支配する展開が続く中、想定外の出来事が起こりました。
ペナルティエリア内、中川のスルーパスに抜け出した武富がGKと交錯。
このプレイに主審のホイッスル。PKの判定がくだされます。
しかし、このジャッジに磐田選手達が抗議すると、主審は副審のもとへ。協議の結果、PKの判定が取り消されるという珍事がありました。
実際スローでみても難しい判定。見る角度でどちらとも取れる難しい判定でしたが、結果的に一度得たPKを取り消されたという恰好のレイソル。
ましてや、仮にプレイが流れていたとすれば、ボールはレイソル小池のもとにあり、磐田GKがゴールから離れている絶好の得点機でした。
それが無かったことになり、磐田のドロップボールからの試合再開となるわけですから、何の非も無いレイソル陣営が怒るのも無理はありません。
そんな状況の中、両クラブの選手が主審に詰め寄ろうとした時、至って冷静に対応した選手がいました。
レイソルキャプテン 大谷秀和。
両選手が群がろうとする中、レイソルの選手達を落ち着かせてその場を離れさせ、多数の磐田選手が主審の前に群がる中、レイソルの選手として一人毅然とした態度で主審と対話し、その結果を受け入れると、何事も無かったようにポジションに戻りチームを鼓舞し始めました。
まだまだ経験の少ない若い選手が多い柏レイソル。本来なら、集中力が切れてもおかしくなく、場合によっては誰かが異議でイエローカードをもらってもおかしくない場面でした。
そこにこの大谷の大人の対応。
レイソルの選手達はその姿を見て冷静になり、その声掛けで試合の集中を切らさずにすみました。
本当に頼りになるキャプテンシー。
ここぞという時の攻撃参加や、守備の駆け引き。
絶対的な攻守の要。
それだけではない、レイソルのキャプテンが大谷である理由がそこにはありました。
余談ですが……、
この時のレイソル下平監督のアピールは今までにないようなものでした。
また、この一連の騒動の時の、下平監督と名波監督のツーショットは、2人を選手時代から知っている昔からのJリーグファンにとっては感慨深いものがありましたね。
好調レイソルの課題②
選手交代が難しいチームのバランス
判定のアクシデントを乗り越え、試合を進めたレイソルは、
終盤に差し掛かる74分。
前がかりに攻め込む磐田攻撃陣の背後を突きます。
レイソル陣内右サイド深い位置から縦に蹴り出した速くて低いボール。右サイドの端を飛んでいくボールを伊東がスルー気味にすらすと、ボールはそのまま前線に残っていたクリスのもとへ。右サイド、広大なスペースをそのまま直線的なドリブルで突き進んだクリス。右サイド敵陣深くへ達すると、ひとり必死に追いすがる相手ディフェンスを抜ききる前に右足を振り抜き速い弾道のクロス!
待っていたのは、速い展開にただひとりついて来ていた中川。そのままの勢いでゴール前に走り込むとジャンプもほぼ必要無いようなジャストボール!もう当てるだけのドンピシャのヘッドが炸裂!
中川、身長155cmのJ最小ヘッド弾!レイソル待望の追加点となりました。
こうなると、ゲームはレイソルのもの。
勝ちにむけて、ゲームをコントロールする時間帯に入ります。
そうなると重要なのが、試合をクローズさせるためのベンチワーク。
気温の高いデイゲーム、いくら上手い試合運びをしていてたとしても疲弊して足が重くなる時間帯。
ここは、うまくフレッシュな選手を投入してチームの勢いを持続したいところです。
……しかし、
動かないレイソル陣営。
磐田が早い段階で3つの交代枠を使いきる中、レイソルのひとつ目の選手交代は試合終了直前の88分。
鎌田 次郎 → 古賀 太陽
その後、アディショナルタイムに入ってから、
手塚 康平 → 細貝 萌
伊東 純也 → ディエゴ オリヴェイラ
このままレイソルが逃げ切ってタイムアップを迎えます。
レイソル見事に6連勝!
……と手放しで喜びたいところですが、
自分はこのベンチワークが非常に引っ掛かりました。
そうです。これが柏レイソルが抱えるもうひとつの課題。
『チームバランスを崩さずに投入出来る選手がいない』
これは非常に危険な香りがします……。
現在非常に好調な柏レイソル。
今のレイソルの強さは、
誰か突出した個の力を使って勝ちきるというよりは、
チーム全体の連動性を活かした攻守のバランスからきていると感じます。
それなら個に頼るより全然良いだろう、問題ない。
……と言いたいところですが。
今のレイソルのチーム力が、
スタメンそれぞれの絶妙なバランスで出来ているとしたら?
GK中村航輔のここぞの判断と反応。
CB中谷進之介の前に積極的な守備とビルドアップ。
SB小池龍太の無尽蔵のスタミナとボールタッチの数。
DM大谷秀和の判断力とキャプテンシー。
DM手塚康平のゲームメイクと攻守の繋ぎ。
FW伊東純也の圧倒的なスピードと右サイドの連携。
FW中川寛斗の足を止めない前線からの守備。
FWクリスティアーノの馬力とチャンスメイク、献身的なプレイの連続。
この誰が欠けても成り立たない今のレイソルのチームバランス……。
もちろんレイソルに限らず、どのチームだって、ファーストチョイスの選手達とそれ以外の選手の起用とでは、チーム力に違いが生まれるのは当然です。
しかし、試合途中、チームバランスをある程度損なわずに、躊躇なく投入できる選手がベンチに一人もいないとしたら、それは大きな問題ではないでしょうか。
サッカーは、総力戦です。
今は戦えていても、出場停止や怪我、その他いろいろなアクシデントで他の選手が出場する状況になった時、もし、チーム力が極端に落ちるようなことになれば、今のような順位を維持するのは難しくなるでしょう。
誤解のないように言っておきますが、これは控え選手の能力のことを言っているのではありません。
ディエゴ、ハモン、細貝、栗澤、今井、古賀。
控え選手の面々を見ても、能力的には申し分ないメンバーが揃っていると感じています。むしろ、それぞれが強力な個の力を持った、素晴らしい選手達です。
もちろん選手が違えば戦い方も変わってくるでしょう。
クリスがワントップに入って攻撃のカタチが出来はじめたのを見てもそれは明らかです。
しかし、今ベンチに控えている選手達が、レイソルサッカーという枠の中で、自分の力を最大限に活かせるようになれば、それこそ最大の武器となります。
今は、拮抗した展開の中で選手交代をするのは、マイナスの要素の方が大きい、非常に難しいチームバランスなのかもしれません。
拮抗を打ち破るための選手交代。
いつか、そんな選手交代が見られるように……。
今後、選手全員の戦術理解と相互理解が深まることを期待しています!
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