ポテンシャルの男 大南 拓磨
Jリーグ第20節、アウェイ湘南ベルマーレ戦。
アディショナルタイムの衝撃的な逆転劇。その口火を切る同点ゴールをあげたのはこの男。
大南 拓磨
背番号25
184cm
右利き
ディフェンダー
柏には珍しい、スピードが武器のセンターバック。
振り切られそうな相手に後ろから追いつき、ギリギリのところで自由を奪う。
また、そのスピードを活かしたパスカットが大きな武器で、相手の楔のパスを瞬間的なスライドで跳ね返す。
まだまだ粗削りだが、縦だけでなく横にも反射的に動ける稀有なセンターバック。
ポテンシャルは間違いなくある。だが、正直自分は、これまでの彼の起用を疑問視していた。
どうしても、足元がおぼつかないのだ。
トラップの乱れ。ボールを持っても顔が上がらない。ドリブルを開始すると足元からボールが離れすぎる。
ビルドアップを試みると、どうしても彼のところでテンポが落ちる。
前から来る相手には彼のところをいつも狙われ、前にボールが運べない。窮屈なパス回しとなり、どこかで前へ蹴り出すしかなくなる。
そのうえ、失点に絡むとパフォーマンスが途端に落ちるきらいがある。苦しみが表情に出てしまう。
ディフェンスに特に必要なメンタル的な弱点も抱えていると感じていた。
だから、なんで序列が上なんだ、と試合中よく思っていた。
高橋祐治と大南のコンビ
おや? と思ったのは、ディフェンスラインに高橋祐治が復帰した天皇杯の試合だ。
ハイボールを跳ね返す高橋祐治。競り合いを制する高橋祐治。さすがだ。
だがその横で、地上戦となるや自慢のスピードを武器に、相手からボールを奪い取る彼の姿があった。
高橋祐治と大南。エアバトラーとスピード対応。しっかりと役割分担をして、それぞれの長所を活かしながら的確に相手の攻撃の芽をつんでいた。
これまで経験の浅い選手同士でコンビを組むことが多かった大南。
この試合ではキャプテンマークを巻く高橋祐治の隣でプレイすることで、的確な指示やプレイを受け、やるべきことが明確になり、元々あったポテンシャルが引き出されたのかもしれない。
湘南戦の劇的ゴール
降格圏に沈んでいたレイソル。湘南戦。アディショナルタイム突如訪れる爆発的勝利。
この試合、大南は5バックの3センターの一角を務めた。
今度は、闘将 山下達也のすぐ隣でのプレイだ。
彼の声出しのおかげか、行く行かないの判断に迷う様子は感じられない。
そのスピードで相手の攻撃を受け止め続けた。
ビルドアップも冷静にプレイ出来ている。
そして何より、失点しても下を向く様子はない。
アディショナルタイムに入って90+3分。
スコアは2-1。何が何でも追いつかなくてはならない場面。
大南は攻撃の流れで前線に残っていた。ここからどのような展開になるかわからない。
後ろに残っている味方の数を確認。自分達がボールをキープし続けている事を確認。
選択したのは、ゴール前に攻め残ること。
エリア内にボールが入る。味方が触れる。GKをすり抜けて目の前に転がるボール。
迷わず突っ込む!
ネットが揺れる!!
ゴール!!!
反撃の狼煙をあげる同点ゴール!!!
これは、間違いなく彼が導き出したゴールだ。
そして、このゴールがその後の大逆転へと繋がったのだ。
覚醒の時は近い
自分は大事なことを忘れていた。大南選手には謝らなければならない。
ディフェンダーにまず問われるのは判断力だ。
どう守り、どうチームを勝たせるか、その一瞬の判断が勝敗を左右する。
もちろん足元があればビルドアップも容易になるだろう。それに越したことはない。
でもたとえ技術が低かったとしても、ビルドアップの方法なんていくらでもある。
たとえば、大南の場合なら、相手を見ながら持ち前の速さを活かしていち早くスペースを確保すればいい。実際、湘南戦ではそれも実践できていたと思う。
だがそんなことよりも、
彼がこの試合を最後まで諦めず、自分なりに考え、行動に移し、それをゴールに結びつけた。劇的勝利の立役者となった。
それこそが一番の収穫だと思う。
そうだ、彼にはもともと、一瞬の判断を実践させるためのフィジカルやスピードは備わっているんだ。
これに的確な判断力が身につけば、とんでもない逸材になるんじゃないのか。
それを見抜いてネルシーニョは彼を使い続けているんじゃないのか。そう、あの酒井宏樹を育てたように。
柏レイソル No.25 大南 拓磨。
まだまだ経験は浅い。だから、今は経験豊富な選手達の横で、めいっぱい自分の良さを活かしてもらえばいい。
そして、その成功体験、失敗体験のひとつひとつが、大南自身の判断力に磨きをかけ、更なるレベルへ押し上げる。
皆が待ちわびる覚醒の時。その時はもうそこまで来ている。そう思う。
伸びしろ十分!
リーグ後半戦の大活躍に期待!
やってやれ!
大南 拓磨!!
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