<柏レイソル> まなぶくん ~2017Jリーグ第8節を前に~

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さかのぼること数年前、2011年の話だ。

柏レイソルがJ1リーグで快進撃を続けていたその年。
なんとなくJ2でも観ようかと、ふとフクダ電子アリーナに足を運んだ時のこと。

J2とはいえホーム側の席は当然活気づいていて、ピッチに近い席を確保するのは難しい。
こういう時は、やっぱりアウェイゴール裏で観戦するにかぎる。
J2中位以下のクラブでは、遠い地方から毎試合アウェイに遠征するサポーターはお世辞にも多いとは言えず、この日のアウェイゴール裏も予想した通り、広いアウェイエリアの一か所に数十人のオレンジ色の一団が固まっているだけで、あとは私服のままの人々が点々と席についているだけだった。

ジェフユナイテッド千葉 vs 愛媛FC。

愛媛FCのゴール裏、最前列の空いたスペースに難なく滑り込んだ私は、アウェイエリアの入口で購入した愛媛FCのタオルマフラーを首にかけると、ゆったりとした気分で試合開始を待つことにした。

自分がほとんど関わりを持たないチームの現地観戦。
日頃味わえない新鮮な感覚で、何とも言えないワクワク感がある。
もちろんJ2の試合もスカパー!を通して少しは観ていたのでまったく知識がないわけではないのだが、それこそスタメンですら顔と名前が一致しない選手が多く、スタジアムのビジョンの表示とサポーターの選手コールだけが頼りだった。

日頃聞くことのないチャントのリズムに心地よさを覚えながら、周りのサポの会話に耳を傾ける。

「まなぶくんイイよね」
「今日もまなぶくんがやってくれる!」
「まなぶくーん!」

まなぶくん。
愛媛サポの誰もがいの一番に名前をあげ、称賛し、期待を込めて応援するこの選手。
まなぶくんとはいったい?

そうこうしているうちに試合開始の時間がきた。

こうなると、否が応でもその選手を注目してしまう。

齋藤 学。

小柄でまだまだ幼い、ヤンチャで無鉄砲な少年のような風貌。
どうやらその雰囲気は、プレイスタイルにもしっかりと表れているようだ。
とにかく強気で、ボールを持つとゴールに向かって突貫していく。
確かにテクニックはある。J2ではあまり見ないボールタッチの多いドリブラーのようだ。

ただ、この試合でのまなぶくんの私の評価は、「ちょっと気になるJ2のアタッカー」どまりだった。
……本当に見る目がない。

サポーターを魅了してやまない、愛媛が誇るドリブラー『えひメッシ』。
実は出場機会を求めてJ1マリノスからレンタルしてきた選手だったことを、私は後から知ったのだった。

その後、J2で結果を残し、横浜Fマリノスに籍を戻したまなぶくんは、今度は『ハマのメッシ』としてJ1で猛威をふるい、いつしか日本代表にまで昇りつめることとなる。

そして、2017年J1リーグ。
マリノスの10番でキャプテンとなった彼は、現在のJリーグの選手の中で最も優れた、最強万能ドリブラーへと覚醒した。

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2017Jリーグ 第8節
柏レイソル vs 横浜Fマリノス
日立柏サッカー場
4月22日(土)15:00キックオフ

小池 龍太 vs 齋藤 学

この試合、レイソルの勝利のカギを握るのはなんといっても右サイド。
マリノスの10番・齋藤学をどうやって封じるかにかかっている。

一度止まって自分の間合いで勝負を仕掛けるドリブラーが多いなか、齋藤学はまったく違う動きをみせる。
たえず動きながらボールをもらうと、そのままスピードを殺さずに自分の歩幅でボールを操り突き進む。相対するディフェンスに準備する時間を与えず、細かいステップでバランスを崩してその一瞬で前に出る。
そして他のディフェンスが「味方が抜かれる!」と思ったら最後。カバーに詰め寄るその刹那、一番危険な場所にパスが飛び出す。

J2で揉まれ、J1で進化したドリブラー齋藤学。

 

いいだろう。その勝負受けてやる。

柏の右サイドバック小池龍太。

J3、J2、そしてJ1。
下のカテゴリで進化を続け、実力でJ1の舞台を掴んだ男。
相手の動きについていくその対人対応能力は、相手が速ければ速いほど輝きを増し、相手のドリブルを吸収する。
そしてボールを奪えば、無尽蔵を思わせるスプリントで相手の背後に何度も現れ、いつしか右サイドを制圧する。

今期最高のプレイヤーを倒して、いよいよ全国区に名乗りをあげる時がきた。

小池龍太 vs 齋藤学

いま実力が試される。

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